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『プラッサンの征服』

Posted by pigmon2 on 13.2009 読書 0 comments 0 trackback
 プラッサンとはプロヴァンスをモデルにしたといわれる架空の町。エミール・ゾラのルーゴン・マッカール叢書の4巻にあたる本書はユルシュルの長男フランソワとピエールの末娘マルト夫妻の家に下宿した神父が彼等の家を支配し挙句は町全体を支配するに至るカルト小説です。これは、かなり面白かった。
 アデライード・フークの3人の子どものうち長男ピエールと次男アントワーヌの確執については前作ルーゴン家の誕生に詳しく書かれているが、彼等の妹ユルシュルに関してはあまり記載がない。ユルシュルは帽子職人ムーレと結婚し、フランソワエレーヌシルヴェールという3人の子どもを授かったが、結核のため若くして亡くなってしまう。そして後を追うように夫・ムーレも自害してしまう。

 残された子どものうち、フランソワはピエール伯父の店で働き、従妹であるマルトと結婚する。本書はこのフランソワ=マルト夫妻がマルセイユで事業が成功した後、故郷プラッサンに戻り優雅に金利生活をしていた頃にはじまる。エレーヌは早くに嫁がされ、後に愛の一ページの主人公になる。シルヴェールはルーゴン家の誕生で共和主義運動に加わり命を落とす。

 ムーレ夫妻の3人の子どものうちオクターヴは2度もバカロレアに落ちた落第生で本書の途中でマルセイユに奉公に出させられる。後にごった煮ボヌール・デ・ダム百貨店の主人公となる。次男セルジュは礼儀正しく勉強のできる優等生で、本書の途中で神学校へ入り、後にムーレ神父の過ちの主人公になる。長女デジレは生まれつき知覚障害があり常に誰かの庇護が必要な存在である。

 強欲のルーゴン家、怠慢のマッカール家に対して狂気のムーレ家と言われている。確かにフランソワ=マルト夫妻も狂ってしまうし、父親のムーレだって妻に先立たれたからといって子どもを残して死んでしまうなんてやはりどこか狂っている。ただ狂っているというのは言い方を変えれば一途なんだとも言える。見境を失くすくらいにのめりこんでしまうのだろう。私が思うにムーレ家の人達はに生きているのだと思う。

 フランソワは憎まれ口は言うものの家族思いで真面目ないいお父さん。マルトも神経質だけれど穏やかないい奥さん。子供たちに囲まれ穏やかに暮らしていた。ところが3階を下宿人に貸してから、それまでの生活が激変した。陰気臭いフォージャ神父とその母フォージャ夫人が生活に入り込むことで最初は落ち着かない気分になっていた。

 やがて下宿人がいることになれてくると、神父に感化されマルトは慈善事業にのめりこむようになる。妻が出歩きがちになると夫の機嫌が悪くなり、子ども達の面倒もおろそかになってきた。仲のよかった夫婦が反目しあい家庭は徐々に崩壊していく。そのうちフォージャ神父の妹夫妻まで同居をはじめる。妹夫婦は寄生虫のように自分たちはなにもしないで他人の財産を食い散らす。

 フォージャ神父はムーレ家はおろか慈善事業などで信頼を得て、町の青年層、社交界、法曹界、政界を牛耳り文字通りプラッサン征服を果たす。ところが町中が彼に傅くようになってから、それまで繕っていた人当たりのよさ、清潔さなどが乱れてきて陰気臭さ、不潔さが目立つようになる。そして人々の心も徐々に神父から離れていく。

 情に生きる人というのは周りに流されやすく利用されやすい。ムーレ夫妻は絵に描いたようにいい人達で私は個人的に好きだ。特にフランソワは憎まれ口を利くだけで、妻に暴力を振るうでなく、迷惑な下宿人達を力づくで追い出すでもない。根がやさしい人間であるため強引なことができないのだろう。彼にもし神父を力づくで追い出すことが出来たなら、少なくともムーレ家の平和は守れたのかもしれない。

 家の中に居場所を無くしたフランソワは、そのうち憎まれ口さえたたかなくなり、廃人のように部屋に篭るようになる。やがて祖母と同じ精神病院に収容されてしまう。マルトは神父に密かな恋心を抱きながら献身的に努める。神父はそれを利用して奴隷のように都合よく扱う。マルトは自分の秘めた想いと葛藤しながらだんだんおかしくなっていく。最後には神父に告白するが、神父は彼女の行いを蔑み冷たく突き放す。

 神父から突き放されたマルトは思い出したように夫に会いに行く。フランソワも彼女に会って自分の家庭を思い出すが時既に遅し。悲惨な結末が待っていた。

 本書にはピエールは直接姿を現さないが、フェリシテは前作以上にパワー・アップした強欲ババアとして登場する。町の人達は皆彼女を中傷するが、冨と権力を手にしているため単に陰口で終わってしまっている。かつての粗末な黄色いサロンは豪奢な緑のサロンに様変わりして町の権力者の集会所となっていた。フォージャ神父も彼女のことばには耳を傾けた。

 アントワーヌ・マッカールも何故かプラッサンに戻って、おそらく兄の庇護の下で悠々自適に暮らしている。相変わらず兄夫婦の悪口を言いながら。アデライード婆さんにも通じるが、何故かこの人も常に誰かの世話になりながらぬくぬくと生きていく強運の持ち主だ。彼は今回はマルトを精神病院に連れて行き夫に合わせる手配をしたり、衰弱したマルトをルーゴン家に連れて帰ったりと一族のために活躍する。なぜか前作よりも人好きのするいいおじさんになっている。

 ただ、こんな不幸な姪をよそに自分に都合いいようにある画策をする。ところが、更に一枚上手のフェリシテに出し抜かれてしまう。フェリシテはフォージャ神父になにかと親切にしたが、常に一定の距離を保っていた。その意味が最後の最後でわかる。まったく隅にはおけないばあさんだ。

 そして、クライマックスでもあるムーレ家の火災シーン。病院を抜け出し我が家に戻ったものの、家から閉め出されたフランソワが強引にドアをぶち壊して侵入した際、
「新しい扉に少なくとも30フランはかかる」
とそんな場合もお金の心配をしている。

 それから火事を見物している隣家の夫人が、火の粉が自分の家に降りかかるのをみて
「部屋を改築したばかりなのに」
と嘆いたり、夫に自分の懐中時計を持ち出したか問いただす婦人がいたり、
「悲しいことでなかったら美しいのに」
と燃え盛る火を見つめる人がいたり、
「夜風が寒くないか」と尋ねられ「ここはとても暖かい」
なんて会話があったりする人間模様が面白い。他人の不幸は確かに気の毒だけれど、傍で見ているほうは結構余裕で楽しんでいたりするゾラ・ワールド炸裂!!人間は皆どこか愚かで、そして滑稽だ。




 
 
 
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