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『愛の一ページ』

Posted by pigmon2 on 25.2009 読書 0 comments 0 trackback
 ルーゴン・マッカール叢書の中でも「休息と気晴らしのシリーズ」と呼ばれる4編の中のひとつ。他の叢書のような人間のいやらしさや愚かさはあまり表現されていなく、やんわり読めるメロドラマです。過激なものが苦手な人には読みやすいでしょうが、思いっきり人間臭さを求める人には少々物足りないかもしれません。
 病気の娘とひっそりパリ郊外に暮らす未亡人エレーヌは、娘のジャンヌの容態が悪化した夜、隣人の医師アンリ・ドゥベルルにジャンヌを看てもらう。このことから隣のドゥベルル家の人達との親交がはじまる。

 何食わぬ隣人として接しながらお互い秘かな想いを募らせるエレーヌとアンリ。母を独り占めしたいジャンヌのやきもちなどもあり、一定の距離を保ちながらも互いの気持ちを確かめ合う。

 ある時エレーヌはアンリの妻ジュリエットが青年マリニオンと密会する約束を知ってしまう。エレーヌはアンリのためになんとかドゥベルル家の平和を保とうとジュリエットを踏みとどまらせようと画策するが、当の本人に罪の意識も緊張感もないのを知ると、アンリに密会の時間と場所を密告した手紙を匿名で送る。

 ところが自分のしたことに罪の意識を感じ、一足先に密会現場に駆けつけ二人を追い払う。遅れてきたアンリはエレーヌからの申し出だと勘違いし、その場で二人は関係を持つ。

 同じ日、母の気持ちが自分から離れたと悟ったジャンヌは寂しさのあまり病状が悪化してしまい、それがもとで死に至る。最後の数週間、ジャンヌはアンリの診察を拒み、エレーヌも罪の意識からアンリを遠ざける。やがてジャンヌの死とともにエレーヌのパリでの生活は終わり、新しい地で新しい夫との生活がはじまる。

 
 これはいわゆる不倫物なんですが、『獲物の分け前』のマキシムルネみたいな鼻持ちならない、いやらしい感じはなく、エレーヌもアンリも好感の持てる人物で、読者も同情してしまう。最もこの物語の中に強いて鼻持ちならない人物を挙げるなら物乞いのフェチェ婆さんと色男のマリニオンくらいだ。マリニオンはともかく、フェチェ婆さんは人から恵んでもらうことばかり考えてあれこれ自分の不幸な境遇を大げさに語る物語で唯一うっとおしい存在。

 そもそも恋愛なんて、やりたくて出来るものじゃなく、降って沸いたように突然訪れるもの。それが若い独身の時ならさほど問題ではないけれど、家庭を持った後に起こってしまったらちょっと厄介。嬉しいけどある意味災難ですね。

 エレーヌも『プラッサンの征服』のマルト同様欲もなく、のんびり穏やかに毎日を過ごしている平凡な女性。ただマルトは恋した男が悪漢であったため人生を狂わされてしまったが、エレーヌとアンリは分別のあるもの同士、悲しい思いはしたけれどジャンヌの死によって終止符を打つことができた。

 最後の章でエレーヌはアンリに恋していた頃の自分が、まるで別人のようだと思う。そしてアンリのことをほとんど何もわかっていない自分に気がつく。恋愛とは一種の虚構なのかもしれない。

 おだやかなエレーヌと対比するようにアンリの妻ジュリエットは明るく社交的で行動的だ。エレーヌは彼女の趣味においても友情においても移り気で気紛れなところに内心嫌気が差しているが、どちらかというと現代的で可愛らしい女性だ。マリニオンとの恋愛もひとつの遊戯として楽しんでいる。エレーヌに邪魔され浮気は未遂に終わったが、決行されたとしてもこの人は左程傷つきもしないし、罪の意識も感じないのだろう。密約を知ったエレーヌが当の本人よりも気が気でなく、その日が迫ると落ち着かないのに対し、ジュリエットは全くいつものままという対比が面白い。

 ただ、この時代の裕福な奥様方はなんとも気の毒だなと思う。エレーヌみたいに欲のない日々穏やかに過ごしたい人にはいいかもしれないが、家事や育児の細かい作業は使用人が請け負ってくれて、少し大きな子どもは寄宿学校へ行ってしまう。自分の仕事もなく、することといったら縫い物か、教会の奉仕活動か、友達とお茶を飲み噂話をする程度。ジュリエットのようなエネルギーをもてあました人は腐ってしまいそうだ。浮気のひとつもしたくなるのが肯ける。

 それから子ども達、特にジャンヌが幼いのが気になる。物語が始まった時は11歳で、12歳で短い人生を終えるのだが、この年頃の子どもって普通はもっと大人ぶりたくて生意気なんじゃないか?おそらく労働者階級の11歳ならもっと大人なんだろう。というか大人にならざるを得ないのだろう。反対になんの苦労も知らない境遇の子どもは、いつまでも子どものままでいられるのだろう。殊にジャンヌは病気のせいで学校へも行っていないから尚更なのかもしれない。

 この話はシリーズ中最も過激な『居酒屋』と『ナナ』の間に出版された。『居酒屋』で高い評価を受けるとともに痛烈な批評も受けたゾラがまったく違うタイプの話を出版して度肝を抜かしたいと企んだようだ。確かに安らげる物語だ。ただ、長いのでちょっと疲れるかもしれない。



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