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『居酒屋』

Posted by pigmon2 on 28.2009 読書 0 comments 0 trackback
 この本を読んだのは、もう10年以上前になりますか。面白かったもけどかなり衝撃を受けたのも事実です。そして自分の人生の中で特別な1冊となりました。現在ルーゴン・マッカール叢書を読み進めていくうちに、やはりここでもう一度ここに立ち戻ろうと思って読み直しました。
 早朝のパリの貧乏アパート、ジェルヴェーズが窓辺に座って内縁の夫ランチェの帰りを今か今かと待ちわびるところからはじまる。その後ランチェに逃げられ二人の子どもを抱えたジェルヴェーズは洗濯女として働きはじめる。

 近くに住む真面目なブリキ職人クーポージェルヴェーズを慕いプロポーズする。一緒になった二人はそれぞれ真面目に働き慎ましく幸せな日々を送る。そのうちジェルヴェーズは自分の店を持ちたいという願望に捕らわれる。ちょうどその頃、クーポーが作業中の事故で大怪我を負ってしまう。

 やむなく開業中止かと思われたところに隣家のグージェ母子がお金を貸してくれたおかげで洗濯屋を開くことが出来た。はじめのうちは商売も順調だった。ところが夫クーポーは休んでいる間に怠け癖がつき働かなくなり、やがて昼から酒びたりの生活をするようになる。しかも、どこからかランチェが舞い戻ってきてクーポー家に居座るようになる。

 ランチェはクーポー家の財産を食いつくし、挙句ジェルヴェーズと再び関係を持つ。働かない男二人を抱えながら彼女自身も仕事がいい加減になり、堕落の道をたどっていく。とうとう商売も傾き店を手放す。屋根裏部屋に移り雇われ洗濯女に戻る。そのうち掃除婦になり、やがて乞食同然の暮らしをする。

 徐々に堕落していく中で、ジェルヴェーズ自身も酒を覚え飲んだくれになっていく。アル中の両親から暴力を振るわれる娘のアンナは不良娘となって家をと飛び出す。やがて夫クーポーはアルコール中毒のため発狂死する。しばらくして乞食のように階段の下で死んでいるジェルーズの死体が発見される。


 改めて読み返してみると、物語の細部をずいぶん忘れてしまったことに気がついた。普通好きな本というのは読み終わった直後に何度もめくり返して読んだりするものだが、この本は何故かそういう気にならない。むしろ読み終わってしまったら当分手にしたくない珍しい本だ。そしてアンナが洗礼を受けた後、造花工場の女工となり家出をするに至る部分は全く読んでいなかった。何故かその箇所を飛ばしていた。そういう意味で読み返してよかったと思う。

 前に読んだときはグージェ母子とアル中の父から虐待を受ける薄幸の少女ラリー以外の登場人物は誰一人好感の持てる人間がいなかった。今読んでみると、ジェルヴェーズは結構いい人なんだなと思った。姑であるクーポーばあさんの面倒も見るし、乞食みたいなグリュじいさんにも親切だった。クーポーにもランチェにも結局強く主張できないため言いなりになってしまう。

 クーポーもまた根はいい人だ。酒浸りで怠け、妻子に暴力をふるうようになってもどこか憎めない。でも確かにだらしない男だ。そもそもランチェを家に住まわせるのが間違っている。ジェルヴェーズを寝取られても知らぬ存ぜぬ。そのくせ発狂してはじめてランチェを責めることばを喚く。結局気が弱いだけなんだろう。

 それに引き換えランチェは前読んだとき以上に鼻持ちならなく、いけ好かない。自分では働かずに他人にたかって生きている最低の人間。何日も洗濯しない不潔な下着を着ているにも関わらず服装はいつもきちんとしていて金に困ってなさそうな風を装う。その上新聞を読みいかにも教養のある人物を装う。ジェルヴェーズやクーポーが欲望にまかせてがつがつ貪り食い太ってしまうのに対して、この男は格好を気にするあまり決して食べ過ぎたりはしない。おまけに贅沢で高級なものばかり食べたがる。

 ランチェがクーポーをそそのかして仕事をサボらせおごらせる場面などは本当に腹が立つ。にも関わらず、この男なぜか隣近所の住民からウケがいい。三角関係を作ったのもそもそもランチェが一番咎められるべきなのに、住民はなにもかもジェルヴェーズひとりが悪いように責める。この場合最も性質が悪いのはランチェで、間男されて黙っているクーポーもだらしない。こんな男たちの餌食にされてるジェルヴェーズはむしろ同情に値するのにくらいなのに。世の中は男よりも女に手厳しい。

 男を駄目にしてしまう女ということばを時々聞くが、ジェルヴェーズもそんな女なのかもしれない。ランチェはともかく、クーポーはもともと真面目な時期があったんだから上手く手綱を握ればなんとか操縦できたのではと思われる。『パリの胃袋』に出てくる彼女の姉のリザなどは上手に夫を操縦している。

 生きていくためには いい人 であるだけでは駄目だなと思う。いい人であることは確かに人間として最も重要なことではあるけれど、なにかが必要だ。それが何であるのかはわからない。自信とかプライドのようなものかもしれないし、秩序を重んじる気持ちかもしれないし、なにかある種の意志。人によってそれは違うのかもしれない。

 胃にくる話だ。『パリの胃袋』は食欲をそそるような話だった。市場の新鮮な食材やシャルキュトリで作られるハムやソーセージのにおい。ごたごたしているけど、どこか明るく、未来へのエネルギーを感じさせる。それに反して本書は食べ過ぎて消化不良を起こし胃がむかついたり、空腹の時の吐き気に似た感覚がする。これでもかこれでもかと絶望へ向かっていく。どちらも同じパリの庶民の生活を描いたものだが『パリの胃袋』は彼等の光の当たっている部分、『居酒屋』は影の部分なのかもしれない。

 ジェルヴェーズの子ども達は皆シリーズの主人公として活躍する。長男クロードは画家となり『制作』、次男エチエンヌは炭鉱夫となり『ジェルミナール』、長女アンナは娼婦となる『ナナ』。そして本書には登場しないがジェルヴェーズの子どもとして機関士のジャックが後に『獣人』の主人公となる。ジャックはおそらく『居酒屋』を書いてる当初は想定されてなく、あとからこじつけられたのだと思われる。シリーズ中にジャックがどのように絡んでくるのか楽しみだ。
 

 
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