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『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』

Posted by pigmon2 on 19.2009 読書 0 comments 0 trackback
 叢書の中で唯一翻訳されていなかった『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』が論創社から出版され、20刊全冊日本語で読めるようになりました。私はこれまでユージェーヌだと思っていたので記事にもそのように表記しましたが、表紙の原書タイトルを読んでウージェーヌと発音すべきだとわかったので、今後そのように書くことにします。

 シリーズ唯一の政治小説というので、かなり難しいのかと思いましたが、意に反してとっつきやすかったです。
 あとがきによると『ルーゴン家の誕生』の中で共和主義運動が起こり、それを抑えたことでルーゴン家が地元プラッサンで権力を握るのですが、その際パリにいた長男ウージェーヌの情報が大きな役割を果たします。その当時のウージェーヌの様子が本書を読むとわかる・・・と書かれているのですが、私にはいまいちわからなかった。また、どこか読み飛ばしてしまったのでしょうか?

 本書はウージェーヌが皇帝の不信を買い大臣の職を追われるところからはじまります。それは大変だと彼の取り巻き連中はなんとかウージェーヌを内閣にもどそうとあれこれ策を弄するのです。彼の周りには地方の有力者やら実業家などが自分の利権のため彼に集まってきています。こういう図式は古今東西あまり変わりがないようです。

 しばらく身を潜めていたウージェーヌですが、支持者からの情報で皇帝暗殺を企てる組織の情報をいち早く掴み、再び皇帝の信頼を得て内務大臣の職に返り咲きます。返り咲いたウージェーヌは取り巻き連中のために忙しく働きます。国のためとか民衆のためとかではなく、自分を支持してくれる身近な一握りの人達のために気骨を折ります。それは自分が常に権力を保持したいがため。

 国民全体のために動けば国民全体から支持される・・・ということには現実にはならないのでしょうか。結局自分の目の届く少数の人間のためにだけ労力を費やすのです。日本でも政界財界の癒着は最近始まったことではなく、今後もそう簡単に無くなりはしないでしょう。誰しもその立場に立ってしまうと案外そんなものなのかもしれない。本当に広く社会を見渡せる人間は稀有な存在なのかもしれません。

 『ルーゴン家の誕生』や『獲物の分け前』に登場したウージェーヌは何を考えているのかわからない、凡人を超越した存在に写っていましたが、本書を読んでみるとかなり人間臭い俗物だとわかります。そうですよね、あのピエールフェリシテの子どもなんだから俗っぽくて当然でしょう。

 本書では彼の恋愛沙汰にも触れています。といっても弟のアルステッドみたいに冨の象徴として女遊びするのとは違い、彼の場合仕事に集中するあまり逆に女を遠ざけているきらいがあります。それでも謎のイタリア人美女クロランドにかまをかけられると不器用ながらなんとかものにしようとします。

 クロランドは取り巻きの男性数人の前で肌をさらして絵のモデルに平気でなれるような挑発的態度をとりながらも結構身持ちは固く、ウージェーヌが関係を迫ると鞭でひっぱたいて蹴散らすのです。このクロランドとウージェーヌの駆け引きがなんともわくわくさせられ面白い。政治的手腕は発揮できても女にはうとい冴えない中年男の姿が浮き彫りにされます。

 ウージェーヌはクロランドの存在を気にしながらも、自分たちふたりが一緒になれば終いには殴りあいになるだろうと予想して彼女を自分の取り巻きの無能な(と彼が思っている)男と結婚させます。そして自分は友人たちのすすめる地味な女性と一緒になります。どうやらこの見解は間違っていなかったみたいです。彼が二度目に大臣の職を追われ官邸を去るにあたり、彼の妻は現実的に新しい暮らしの準備をはじめます。愛情など感じられない夫婦なのですが、要人の妻としての彼女の態度は見上げるものがあります。

 彼が二度目の失脚をした後、その後釜に座ったのはなんとクロランドの無能な夫。彼女は結婚後もウージェーヌにさも気がありそうに近づいて、彼からあらゆる政治手腕を盗み出し夫を一人前の政治家に育てあげたのです。実は彼にはウージェーヌの決してかなわないものを持っていたのです。それは容貌。クロランドは夫婦揃って議会に向かう途中、通りに集まる人々が美形な夫に賞賛の目を向けるのを見て気をよくしていました。

 どんな時代でもどんな社会でも美男美女はおやっぱり得です。クロランド自身も自分の美貌を最大限に活用して生き抜いてきました。ただ、彼女はきれいなだけじゃなく才覚も行動力もあるとても魅力的な女性です。読んでいて惚れ惚れしました。

 それに対してウージェーヌはずんぐりと太ってまぶたが重くかぶさった・・・というなんとも醜い姿です。どうもルーゴン家は美男美女とは縁がないみたいです。一方マッカール家、ムーレ家ではそこそろ美男美女がいるようです。『パリの胃袋』のリザは近所の人達から《美人のリザ》とあだ名され、『居酒屋』のジェルベーズもなかなかきれいだと書かれています。また『愛の一ページ』のも隣家の医師が思わず見とれるくらい美しい女性でした。

 はっきり書かれてはいませんが、『ルーゴン家の誕生』のシルヴェールも『大地』のジャンも、『製作』のクロードもなんとなく魅力のある男性だと思えるのですが、ルーゴン家の兄弟
ウージェーヌ、アリスティッド、パスカル、それから妹たちシドニーとマルト、どれも容貌がいいようには思えません。

 そもそもアデライード婆さんは最初の夫、ルーゴンとはなんとなく結婚してしまったのですが、愛人マッカールには相当の情熱を持って接しています。もしかしてマッカールは子持ちの女が子どもをほったらかしにしてまで夢中になるくらい魅力的なイケメンだったのかもしれません。ルーゴン家は3つの家系のうち最も幸運を手にしている一家だけれど、ある意味気の毒だなと思ってしまいました。



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