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『大地』

Posted by pigmon2 on 29.2009 読書 0 comments 0 trackback
 叢書中、かなり分量のある『大地』を読破しました。図書館で借りた本を持ち歩いていたのですが、荷物がかさばって少々不自由しました。昼休みにこの本を広げると、その分厚さに
「すご~い」と圧倒される人が結構いました。
 見た目もさることながら、内容もかなり重いものがありました。ただ、ゾラ流の俗っぽさも手伝い読み進むのはそれほど骨の折れるものではあるませんでした。

 兵役を終えたジャン・マッカールは小麦の生産地であるボース地方にあるローニュという村のウールドカン農場で作男として働いていた。村の娘フランソワーズと一緒になるものの土地相続をめぐり姉妹間、親戚間のごたごたに始終し最後はフランソワーズが死にジャンも再び志願兵となる。

 この話はジャンが主人公ではあるけれど、事実上フランソワーズの親戚フーアン一族の物語である。フーアン爺さんには3人の子どもがいるが、長女のファンニーは真面目な農夫と一緒になり慎ましい生活をしているが、長男のイヤサントは定職にもつかず密漁やたかりで生活しているならず者である。次男のピュトーも好き勝手をやってフランソワーズの姉でもある従妹のリーズを孕ませてもどこかへ逃げてしまう始末。

 そんな折フーアン爺さんは年老いて畑仕事が出来ないのを理由に引退を考え自分の土地を3人の子どもたちに分割し、自分は子どもたちから年金をもらい暮らしていこうとする。ところがそれぞれの土地を手にした子どもたちは結局は老いた父親を厄介払いし、爺さんは廃人のようになってしまう。これはとっても『リア王』を彷彿させる。

 土地を相続した後イヤサントは変わらずのらりくらりの生活を繰り返すが、ピュトーは改心したようにリーズと一緒になり真面目に自分の土地を耕す。ピュトーとファンにーの夫デロンムが父親のところに年金を納めるやいなやイヤサントがたかりにくる。不思議なことにフーアンはそんな馬鹿息子にほいほい金を渡してしまう。そもそもこんな馬鹿息子に財産など残してもなんにもならないと思うのだが出来の悪い子ほど可愛いとでもいうのか、親というのは子どもに対してどこか盲目なのだろう。

 ピュトーが真面目に結婚したもうひとつの理由はリーズとフランソワーズの父親が死に、その財産が二人の姉妹に相続されるため。なんとも現金な男だ。しかもジャンがフランソワーズと結婚したがると義父の残した土地の半分が失われるため猛烈に反対する。フランソワーズもジャンへの愛情というよりも自分の分け前を義兄に渡したくない一心でジャンとの結婚を承諾する。こんな結婚生活が幸せになれるわけあるまい。

 最後にピュトーはフランソワーズを強姦し、いざこざの末彼女に大怪我を負わせ死に至らしめる。死に直面してフランソワーズは自分の財産を夫へ残す手段を選ばず、自分を強姦し殺した義兄へ残す道を選ぶ。彼女にとってもジャンはあくまでもよそ者であり、最後までフーアン一族のひとりとして人生を全うする。なんとも皮肉な話だ。

 私はパソコンを使って仕事をしていて、時々自分がパソコンを使っているのではなく、パソコンに使われているような錯覚に襲われる。同様に、そもそも人間が土地を耕し支配しているはずなのに、いつのもにか人間が土地に支配されてしまっている。都会で育った私には土地への愛着というのもがよくわからないが、土地を耕すことを生業にしている人達には人生から切り離すことのできないものなのだろう。

 村の人達の信仰心に触れる箇所も印象的だ。そもそも村の人達にとってキリスト教はなんの意味も持っていない。何故教会があるかというと近隣の町や村への建前で飾りとしておいている。そんなわけだから神父の言うことなど誰も聞かない。しかもならず者のイヤサントのあだ名がイエス・キリストというから真面目なクリスチャンが聞いたら怒りそうだ。農民にとっては土地こそがまるで神のようだと思わされた。

 この村でのジャンの存在は『パリの胃袋』のフロランの姿と重なり合う。どちらもどこからやってきたのかわからないよそ者で、周囲の人達からなにかいかがわしい過去があるんだろうと邪推されている。二人ともまったく悪意のないいい人なのに、最後はコミニティーが自分たちの利得を守るためにはじき出されてしまう。ここにも民衆のみえない暴力を感じる。

 この本が出版された時、『居酒屋』同様非難が殺到したというが、確かに頷ける。村の人達の奔放な性生活はかなり生々しく読んでいて気分が悪くなりそうだ。この気持ち悪さは『居酒屋』を超える。人間人間って偉そうに言っていても結局は動物なんだなと思わされる。

 それでも相反して生命力のみずみずしさもまた感じられる。リーズと牛の同時お産とか、実った麦畑の青々とした風景は躍動感が感じられる。冒頭でジャンが畑に種を巻いているシーンなどはまさしく絵画の『種まく人』を思わせる。

 


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