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『制作』

Posted by pigmon2 on 11.2009 読書 0 comments 0 trackback
 ルーゴン・マッカール叢書14刊、『居酒屋』ジェルヴェーズの長男クロードの物語です。上手くはいえないのですが、叢書中本書はなんか浮いたような位置にあるような気がします。ゾラの自伝的要素が強いためと言われているので、そんなことも関係しているのかもしれません。
 『居酒屋』に出てきたときのクロードはまだ子どもだったので何とも言いようがなかったが、本書のクロードと『パリの胃袋』に出てくる陽気な絵描きクロードが同一人物だとは思えない。『パリの胃袋』の少年画家は浮世離れしたところはあるものの、最後までフロランの理解者で社会を公正なまなざしで見つめていた。

 本書のクロードは芸術家気質が高まったというのか、ますます世離れして気難しくエゴイスティックに描かれている。それでも前半のクリスティーヌとの出会いは爽やかな恋愛ドラマを見ているようだし、芸術家仲間と戯れる姿は青春映画を見ているようで微笑ましい。

反面 パリで豚肉やを営む結構な暮らしをしている伯母とは仲たがいして以後付き合いはなく、男に食い物にされた母親のことは気の毒に思うが関わりたくない
など彼のクールな部分が見え隠れする。母親を食い物にした男とは誰あろう自分の父親なのに。

 私は芸術家、しかも人々の心を動かすようなカリスマ・アーティストとかその国を代表するようなトップ・アスリートなどは、みんなわがままなんじゃないかと思っている。わがままが悪いっていうことではなく、ワガママでないと頂点には立てないんじゃないかという気がする。それでも成功した芸術家ならば体裁は整うが、世の中に認知されなければ単なる奇人変人のままで終わってしまう。

 クロードは仲間うちの中では最もその才能を認められていた。ところが作風が斬新すぎて一般には受け入れがたく認知されることはなかった。クロードの作法を盗み世間に受けがいいように手をくわえた友人などは、自分が出世した後でもクロードの評価をひたすら気にしていた。
 
 誰しも好きなことを仕事にできればそれに越したことはないのだけれど、そう上手くいかないのが人生。クロードの同郷の友人である建築家などは逆玉に乗ってとある建築家の娘と結婚したが、学がないけどたたき上げでのし上がってきた舅と知識ばかりで経験の乏しい彼とは折り合いが合わず、最後は舅の事業からはずされ病気がちの子どもたちの子守をするはめになってしまう。

 前述のクロードの作風を真似て出世した友人画家は、やり手の投機家に見込まれ彼の絵は見る見る間に高値がついたが、投機家のやり方が詐欺まがいであったため破産への道を余儀なくさせられた。美術誌編集者となった友人は誰に対しても当たり障りのない記事を書くことで自分の存在を維持していた。

 生きていくことは大変だ。まして芸術のように生活に必要不可欠でないものなら尚更。それでもクロードは愛妻クリスティーヌに支えられながら芸術家としての一生を全う出来たのだから幸せだったんじゃないかと思う。クリスティーヌも母となっても子どもよりも夫に愛情を注いでしまうようなお目出度い女なんだけど、そんなお目出度い女だからこそクロードみたいなお目出度いなりそこないの芸術家と苦楽を共にできたのだろう。

 本書は、主人公クロードがゾラの友人ポール・セザンヌを彷彿させることから、セザンヌとの仲が絶縁になったという話は有名である。芸術を知らない私でもクロードの作風や理想がセザンヌのものと通じることは理解できる。ただ、これはあくまでもフィクションであるし、クロードと違ってセザンヌは画壇で成功を治め今に至っても印象派を代表する画家である。ただ、そうとわかっていてもセザンヌにしては面白くなかったのだろう。

 それに引き換えゾラの分身と思われるクロードの親友・小説家サンドーズがあまりにも理想的に書かれているのが気にかかった。なんだか自分を美化し過ぎているようで退けてしまった。サンドースをもっと駄目なやつに書いていたなら、セザンヌの怒りも少しはやわらいだであろうに。

 ルーゴン・マッカールの中ではなんとなく異色の本書であるが、ゾラの描く世界はやはり人間の欲とかエゴとかしたたかさが充満していて面白い。また本書は女性の登場人物は少ないが、割と魅力的な女性が登場する。

 クロードの恋人、後に妻になるクリスティーヌはある意味ばか女だけれど、ひたむきにクロードを理解し愛し続ける姿は感銘を与える。サンドーズの妻アンジェリーズはやはり理想的に書かれすぎていて素敵な女性なのかもしれないが私は退く。反対に町の娼婦イルマ・ベコーはコケティッシュな魅力があり、薬草屋のおかみマチルドは決して好感の持てるタイプではないのだけれど、己が欲望に忠実にひた走るある意味魔女的な魅力を感じた。

 クロードの葬儀には数少ない友人達だけが参列し、親族はたった2人しか来なかった。パリで古物商を営む伯母とパリで百貨店を営む従兄。言わずと知れたシドニー夫人オクターヴ・ムーレ。シドニー夫人はおそらくクロードがなにか値打ちのあるものを残しているんじゃないかと詮索して、或いは誰か商売の対象になる人物に出会えるんじゃないかと期待してやって来たんだろう。オクターヴがどういう心境でそこへ参列しているのかはこの段階ではわからない。

 それでは次はパリで百貨点を営む従兄の青春時代のおはなしでも読んでみようと思う。







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