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『ナナ』

Posted by pigmon2 on 22.2009 読書 0 comments 0 trackback
 ナナは言わずとしれた『居酒屋』ジェルヴェーズの娘アンナ・クーポーです。叢書中『居酒屋』と『ナナ』は教科書などにも載っている最も有名な作品です。
 物語はナナが華々しく女優デビューするところから始まります。ヴァリエテ座の新しい舞台にナナというとてつもない新人がデビューすると開演前から大変な噂になります。期待に高鳴る観衆の前に現れたのは薄い布一枚を身にまといはぼ全裸状態の大柄の女優。歌は調子っぱずれだし、演技も上手くはない。凄い美人というわけではないが人々を魅了する魅力がある。殊にその肢体に多くの男性が魅了されてしまいます。

 その後舞台を捨てて銀行家の愛人になって田舎で暮らしたり、16歳の少年との恋愛ごっこに夢中になったり、同じ劇団の俳優と同姓してDVを受けたり、レスビアンに走ったりと波乱万丈な人生。大変短い晩年はミュファ伯爵に囲われながらも大勢の男たちと関係しつつ贅沢の限りをつくし、最後の最後は天然痘にかかって短い人生を終わらせる。

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 ナナは下層階級から飛び立った金蝿で上流階級へ復習するために男達を堕落させる・・・というような記事をジャーナリスト・フォシュリーが書いていて、また作者自身も同じように書いているが、このへんはとても疑問に思う。そもそもナナは自分の欲望に忠実であって他人が幸福だろうと不幸だろうとどこ吹く風。他人を不幸にするとか復習のためとかはまったく考えていないだろう。

 確かに関係した男たちを堕落させ破滅に追い込むが、直接それを臨んだわけではなく、彼女の欲望を満たした結果、多くの男たちを破滅させただけのことだ。ナナは性悪女なんだが、不思議と憎めない。ただただ贅沢をすることと男たちに傅かれることのみを望みそのために誰とでも寝る。

 ある人のコメントに『居酒屋』と『ナナ』は叢書中最も不幸な女の二代物語だと書かれていた。『居酒屋』のジェルヴェーズは確かに不幸な女だが、果たしてナナは不幸だろうか?とりあず生活面ではいつも誰かしらが面倒を見てくれているし、不特定多数の男と関係することに罪の意識も感じなければ幻滅もしない。

 不幸ではない代わりに決して幸福でもなかった。自分自身のからだの他にはなんの才能も技術も持ち合わせていない。しかもお金を湯水のように使うが一向に充実感は得ていない。関係した男たちの誰一人本気で愛したことがない。
「誰と寝たって私は一度も楽しくなかった」
というセリフがあったが、それは本音だろう。どんな男もどんな事も喜びを見出せなかった。そういう意味では気の毒な人だといえよう。

 本書は『居酒屋』と並んで最も人気がある有名な話だが、それはおおいに納得できる。ストーリー展開がダイナミックで終盤に向かうほどスピード感が加速する。そのためあれよあれよと読まされてしまった。ナナは単細胞だが、そのほかの登場人物の心理描写が面白く、ことにミュファ伯爵の葛藤は臨場感があってとても面白い。伯爵は最もナナに夢中になり且つ最もナナの餌食になった人だ。

 そもそも非常に真面目な人だったのにナナによって自分の内なる性欲に目覚めさせられ、最初はそれと葛藤する。それでもあがないきれず徐々にナナの毒牙にかかっていく。しまいには家庭は崩壊し、財産も巻き上げられ、ナナは浮気しほうだいで自分をみんなの笑いものにしているのにナナから離れることができない哀れな男だ。このミュファ伯爵とナナの関係は谷崎潤一郎の『痴人の愛』のジョージナオミの関係に非常によく似ている。というか谷崎が本書に影響されたのかもしれない。

 天然痘にかかったナナをライバル女優のローズがホテルなどの世話をしてくれた。ローズはかつてナナから愛人を奪われ役も奪われていたにもかかわらず、肉の塊のようになったナナを最後まで看取る。ほかの娼婦たちも変わり果てたナナの死に顔を見舞いにくる。それと反して男たちは誰一人は部屋まで上がってこない。ミュファ伯爵でさえ公園のベンチからナナのいる部屋の窓を悲嘆にくれながら見上げているだけ。情けない。

 ナナは「私は尊敬されたいの」と言っていたが、残念なことに彼女を尊敬の念を持って本当に愛してくれた男はひとりもいなかったのだろう。彼女がもうすこしお利口なら、あるいは誰かひとりでも本当に愛してくれたのなら、もうすこし違う人生もあったかもしれない。そういう意味ではやっぱり不幸な女なのかもしれない。愛情の価値は激しさじゃない。激しく愛することは結局は自分本位な感情なんだとつくづく感じた。
 



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