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『獣人』

Posted by pigmon2 on 11.2009 読書 0 comments 0 trackback
 居酒屋ジェルヴェーズの息子のひとり、ジャックが主人公の物語です。この話は叢書中おそらく唯一の犯罪小説です。サスペンスタッチが好きな方は面白く読めると思います。
 パリから大西洋岸に渡る西部鉄道の列車の中、ひとつの殺人が行われていた。被害者は西部鉄道の重役兼裁判署長グランモラン、殺したのは被害者の養女の婿であり西武鉄道クロワ・ド・モーグラ駅の助役ルーボー。妻セヴリーヌが養父である裁判署長と関係を持っていたことを知った彼は理性を失い車内で刺殺したうえ死体を窓から投げ捨てる。

 機関士ジャック・ランチェは性的興奮が起きると殺人を犯したくなる性癖があるため、日頃から女性を避けていた。ある日、たまたま線路脇で走り去る電車の窓を眺めている時殺人の現場を目撃してしまう。容疑は同じ列車に乗り合わせていたことからルーボー夫妻に疑いがかかるが、目撃者ジャックの証言もあいまいで迷宮入りしてしまう。事件後ジャックとセヴリーヌは愛人関係になるが、セヴリーヌに対しては殺意が起きなかったのでジャックはあの症状が終わったものだと思い安心する。一方ルーボーは妻の浮気を黙認しつうギャンブルに明け暮れる。ジャックとセヴリーヌはルーボー殺害を計画するが実行に移せない。

 そのころジャックに秘かに思いを寄せる踏み切り番の娘フロールはセヴリーヌへの嫉妬から二人の乗った機関車を転落させてしまう。ところが当の二人は助かり、大勢の人の命を奪った罪悪感から自ら命を絶つ。ジャックとセヴリーヌは再びルーボー殺害計画を立てるが、計画を練る最中にジャックに発作的に殺意が起こりセヴリーヌを殺害してしまう。

 その後容疑が石切夫カビュッシュとルーボーにかかり、ジャックは元の生活に戻る。ジャックあの性癖が直ったかどうか知りたくて火夫ぺクーの愛人フィロメーヌと関係したことから彼の嫉妬を買い、暴走する機関車の上でつかみ合いのけんかとなり共に吹き飛ばされて死んでしまう。


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 まずジャックのルーゴン・マッカール家系の中での位置づけだが、ジェルヴェーズとランチェがパリへ駆け落ちした際、プラッサンに置き去りにされていたという設定になっている。これは少々無理があるけど、ジェルヴェーズもランチェも左程子どもに愛着を持っていないようなのでこれもありかなと思える。プラッサンの親戚に育てられた彼は自分の中の異常な性癖に相当悩んでいるようだ。

 読む前はあのランチェの血を受け継いだのだから、かなり身勝手な嫌な男かと思ったが、思いのほかナイーブで真面目でむしろ好感のもてる若者だった。本書のテーマである人間の内なる獣性はジャックのみならず多くの男たちの中にも見え隠れしている。

 最初に妻と裁判署長との関係を知ったルーボーが豹変するシーンは迫力があって驚かせる。年の離れた妻に甘すぎるほど甘い夫が、逆上のあまり妻の髪の毛を掴んで引き擦りまわす姿はかなり恐ろしい。ほかにもぺクーの愛人フィロメーヌは彼からも兄からも暴力を振るわれていた。彼女がジャックとセヴリーヌのようなやさしい恋愛関係に憬れるのは無理もない。そのほかに病気の妻の浣腸に鼠殺しの毒を仕込む男がいたり、男って恐ろしいと思わされる。

 反面、セヴリーヌは弱弱しく常に誰か男性の庇護を必要とする哀れな女みたいだが、ジャックに夫を殺すようそそのかすのは何とも危険な女だ。そもそも養父に強引に関係を持たされたことは仕方ないとして、そのことで夫が逆上して殺人を犯し、その夫を愛人に殺させようとする。最初の殺人で容疑がかかった夫を救おうとパリの重役のところへ頼みに行くシーンがあるが、その重役も彼女の女としての魅力によって依頼を呑んでしまう。なんとも怖ろしいトラブルメーカー。

 対してフロールのやったことは決して許されることではないが、同性の目でみるとこちらのほうが可愛気がある。セヴリーヌと違いフロールは自らの手で馬車を踏み切りに押しとどめ機関車を転落させる。なんともダイナミック。女もやっぱり怖ろしいってことか。

 しかしながらルーゴン・マッカール叢書の幅の広さにはほとほと感心してしまう。
『愛の一ページ』のようなあまいラブストーリーもあれば、
『獲物の分け前』みたいな三文よろめきドラマもあり、
『居酒屋』や『大地』のような人間を生々しくえがいたものもあれば、
『ごった煮』のようにコミカルに描いたものもある。

『プラッサンの征服』もスリリングで面白かったが、ミステリーファンにはむしろ本書ほうが面白いんじゃないかと思う。事実私自身シリーズ中一番速く読み終えたのが本書であるから。





 
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