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『ジェルミナール』

Posted by pigmon2 on 24.2010 読書 0 comments 0 trackback
 『居酒屋』ジェルヴェーズの末息子エチエンヌの物語です。この話はひとことで語れば
フランス版ワーキング・プア。読むのに辛い部分もありました。ただストーリー展開は面白かったです。
 職を失った機械工エチエンヌ・ランチェはフランス北部のモンスー炭鉱で炭鉱夫として雇われることになる。実直で同僚からも会社からも信頼されているマユの家に下宿させてもらう。エチエンヌはマユの一人カトリーヌとお互い恋心を抱きながら進展せずカトリーヌは同僚のシャバルの彼女になる。
 
 炭鉱夫達の過酷な労働、厳しい生活を目の当たりに見てエチエンヌは驚愕する。折りしもヨーロッパ全域に労働者運動が起こりはじめていた。エチエンヌは以前の上司やロシア人仲間スヴァーリンの影響を受け独学で勉強し同僚達に労働者の権利などを説いていく。やがてエチエンヌは労働者運動のリーダーにのし上がる。労使交渉は最初は礼儀正しく行われていたが、話し合いは決裂しストライキに突入する。最初は意気揚々とまとまっていた労働者達だったが、貧困と飢えから粗暴になり大混乱を起こしやがて軍隊も介入し大勢の命が落とされる。

 最後は日々の糧を得るために労働者たちは再び炭鉱に戻っていく。炭鉱が再開されたその日、スヴァーリンによって仕掛けられた爆弾によりエチエンヌやカトリーヌたちが生き埋めになり、二人は結ばれたもののカトリーヌは息を引き取りエチエンヌだけが助かる。


☆      ☆      ☆      ☆       ☆


 このシリーズ、同じ時代の同じ国を舞台にしているのに階級によって生活環境が大きく異なる。それがその時代の現実だったんだろう。上流階級、中流階級のものはさほど感じないが、下層階級の話は生活苦が生々しい。これまでにも生活苦が痛々しい話はあったが、おそらく本書がシリーズ中最も過酷で最も過激だと感じた。『居酒屋』や『大地』も過酷な労働や生活苦は感じられたが本書ほどでない。思えば『居酒屋』には貧しいながらも都会に暮らす人々のやけくそな陽気さがあったし、『大地』には貧しいながらも田舎で自然を感じながら暮らす人々の呑気さが感じられた。

 ところがモンスー炭鉱で働く労働者達は仕事現場自体が暗く狭く暑い・・・汚いキツイ危険の3K労働。住居も狭くマユの家では家族が揃って雑魚寝同然に1つのベッドを2人か3人でシェアして寝ている。エチエンヌは子ども部屋に下宿していたが、ベッドはカトリーヌと一緒。これって有り得ないでしょう。いくら弟達が同じ部屋で寝ているからと言って年頃の娘と若い男を同じベッドに寝せるなんて!!それで二人は意識しあいながらも何事もなく終わる。

 他の話にも共通するが、どんなに貧しくて食べるものもにも困っていても、人間何故か性欲だけは衰えないで、本書でも労働者達の奔放な性描写が描かれている。ただ、書き方は『大地』のようにリアルでないので割と読み流せる。近所にネグレというケチな商店のオヤジがいてつけを返せない客は女房や娘を差し出せば帳消しにしてもらえる。そんなわけで彼は町の女達から毛嫌いされていた。この話で最もショッキングな場面はそのネグレが暴動の際塀から落ちて転落死し、女達が彼の死体から男性器を切り落とす・・・なんて描写があった。あれはキツかった。

 本書を読むまでは個人的にエチエンヌに対して好意的な印象を持っていた。『居酒屋』で幼いながらも健気に鉄工所で働き、そのうち出稼ぎに行けば時々貧しい母にお金を送金してくれるやさしい息子。本書を読んでみると確かに善良な人間ではあるが、労使紛争に明け暮れるのも本質的にもう少し楽したいという内なる欲望の表れともいえるし、自分がリーダーになって人々が扇動されていくことに深い快感を覚えている。まあ、非常に人間臭い奴なんだ。

 酒を飲むと人を殺したくなる・・・という気質を持ち合わせているようだが、作中酔った勢いで酷い暴力を振るったのは恋敵のシャバルに一度だけだ。これは『獣人』のジャックが性欲を覚えるとその女を殺したくなる・・・という気質に似ている。ただジャックは本当に一度その罪を犯してしまうが・・・

 ジェルヴェーズの子ども達は皆悲惨な人生を送ることになる。ただその中でエチエンヌが最も家庭環境は恵まれていたかもしれない。上の兄は口減らしのため8歳の時養子に出される。下の兄ジャックは一家がパリに出てくる時、親戚の家に置き去りにされ、そのまま親戚に育てられた。妹のアンナは両親がアルコール中毒で心身ともに壊れていく姿を目の当たりに見ている。その中でエチエンヌは義父とはいえ幸せな家庭で母や妹と一緒に暮らしていけた。

 とはいえ兄達よりかいい人間に育ったかというと特に違いはないように感じられる。ジャックやクロードは多少人間嫌いの変わり者の要素があるものの特別いじけた人間でもない。よく今時の日本人は「育った環境が悪いと~~~」「親が悪いと~~~」などと家庭環境のせいにするけど、このシリーズを読んでいると疑問に思う。ゾラとしては正しく血筋と環境の関係を書きたかったんだろう。ジャックやクロードもだけど、ポーリーヌアンジェリックも他人に育てられるが素直ないい子に育っている。遺伝による影響も生活環境の影響も結局は未知数なんじゃないのかと思う。

 過酷な労働の現場、労働者が集って決起するシーン、暴動シーン、最後の炭鉱にエチエンヌや数人の仲間が閉じ込められるシーン。読んでいて大変臨場感があった。本書は映画化もされているようだが、シリーズ中最も映画化しやすい作品だと感じた。






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